タイトル: リスク(標準偏差)の活用法
ポートフォリオ理論を利用する場合、まず各資産のリターン(収益率)を「それがどのような要因に応じて決まるのか」も含め、予測しなければならない。CFP試験においては、要因の発生確率と要因ごとのリターン(収益率)が与えられているため計算できるが、実際の投資に活かすとなると、価格に影響を与える要因が多すぎて個人の情報量では収益率を予測できない。 個人においては、過去の平均をリターン(収益率)とみなして計算するしかないと思うが、「過去の株価上昇は、将来の株価上昇を約束するものではない。だから過去のリターン(収益率)を参考に、将来のリターン(収益率)を推測してはいけない」という意見もある。また、過去の平均値も、採用するサンプル期間のとり方で変わってしまう。 結局ポートフォリオ理論を利用するには、景気の好調・不調・普通・暴騰・暴落の確率を恣意的に割り当て、それぞれのリターン(収益率)を予測するか、批判に負けず、過去の平均を恣意的な期間で導き出すしかない。どちらにしても恣意的な数値で、すべての人を納得させる客観的数字とはならない。 ところが、リターン(収益率)については、過去のデータを採用する事に批判的な研究者も、ことリスク(標準偏差)については5年程度の期間のデータ数があれば利用することに肯定的な意見が多いようだ。つまり、リスク(標準偏差)に限っては過去平均を使っても差し支えないということ。 過去の平均なら、投資信託のサイトや、モーニングスターなどでは過去の平均の数値としてリターン(収益率)やリスク(標準偏差)を紹介しているので、リスク(標準偏差)の数値は簡単に手に入れることができるし、個別銘柄なら、過去5年の月間変動率を調べて平均値を導くことができる。 では、リスク(標準偏差)をどのように使うのか?リスク(標準偏差)とは、ブレ幅のことで、「中心(平均)からどのくらい離れるか」ということ。そして±2標準偏差(リスク)の中に納まる確率は約95.44%になる。仮にリターン(期待収益率が)5%で、リスク(標準偏差)が20%の資産に1万円を投資した場合、平均では500円儲かり、95.44%の確率で4500円(5%+20%×2)の儲けから3500円(5%-20%×2)の損の範囲になるということだ。 つまり、リスク(標準偏差)は、投資をしたいがあまり余裕のない方や、適正な投資額を知りたい人にとっては、投資に回してもいい金額を測定するのに使える。 仮に投資に回せるお金(失っても手当てできるお金)が毎月1万円あったとして、1万円を投資するのではなく、リターン(予想収益率)がゼロの時、リスク(標準偏差)が20%なら-2標準偏差の40%が最悪のケース(失う確率95,44%の範囲内)になるので1万円÷40%の25000円までが投資に回せるお金となる。 もちろん、十分な預貯金が有ってのことだし、予想収益率が-60%ならすべて失ってしまう。結局、貯蓄・保険を含めて考えた、トータル的な運用プランが必要となる。 田島FP事務所(T.F.P.O) 田島 稔之 CFP®