なぜ日本の金融機関はFPを活用できないのか
いま、久しぶりにファイナンシャルプランニング(FP)に関する本を書こうとしています。私は本を書くのは苦手で、あの多くの時間を費やす作業はくたびれます。ただ、「やはりこれは言いたい、これだけは書いておきたい」と思うことがあり、最後の本を書こうとしています。
日本のFPは銀行、証券、保険など日本の金融機関が後押ししてくれました。1987年に日本FP協会が設立され、現在のAFP資格制度が始まりましたが、FP協会会員(AFP)が1000人を超えるのに3年かかりました。それが1997年、日本版金融ビッグバンが始まり金融機関によるFPブームが起こると、それまで10年かけてやっと1万人になったAFP(CFP含む)が5年余りで10万人を超えたのです。
このように、金融機関はFP業界に大きな貢献をしてくれましたが、実際にFPが金融業界に貢献しているかというと、残念ながらまだ限定的な範囲で、本当の貢献はしていません。もう10年ほど前になりますが、あるメガバンクの教育部長が私に「うちにはCFPが1000人以上いるが何の役にも立っていない、なんとか彼らを再教育して役に立つようにできないか」と言ってきました。それは屋上屋を重ねるのと同じで、無意味です。それは何故か、そしてどうすれば良いのかを、本に書こうと思っています。アメリカで、オーストラリアで出来ている金融機関のFP、それは金融機関の業績に密着しています。一方、日本では社員教育の域を出ていません。
いま、日本で一番FPを活用し業績に結び付けることができるのは銀行でしょう。銀行では預金、ローンだけでなく証券も保険も販売されます。これらを、FP活動を通して業績に結び付けられるかどうか、それはFPの教育、知識ではなく、FPの6ステップを実践できるかどうかです。
ここでは、紙面が足りませんので、詳しく説明できませんが、金融機関がFP活動をする、すなわちFPの6ステップを踏むには金融商品を売ってはダメです。FPの6ステップを踏むためには“FPサービス”を売らなければいけません。「ライフプラン設計3万円」、「住宅資金設計2万円」、「相続設計5万円」と価格を付けて販売するのです。そのためには特別な営業部隊、FP営業部隊を作る必要があります。
以前、三井生命がアメリカで有名なFP会社、アメックスと組みFP部門を作り、サービスを始めました。しかし見事に失敗しました。それは“FPサービスを販売する”という意識がなかったからです。FPサービスは無料で、販売したのは生命保険でした。これではFPの6ステップは踏めないのです。
今度この内容を本に書こうと思っています。これは単に金融機関のためというわけではありません。金融機関が“FPサービス”を販売するようになれば、生活者の皆さんにとってファイナンシャルプランニングがぐんと身近なものになるはずです。日本にFPを根付かせるために金融機関の力を借りたいのです。かつて金融機関がFP資格を広めてくれたように、本気でFPサービス導入に取り組んでほしいと願っています。
Mr.FP Professionals 代表
株式会社エフピープラネット 代表取締役 井畑 敏