タイトル: NISA(日本版少額投資非課税制度)について考える
昨年2013年夏ごろ、テレビCM、新聞や雑誌広告、あるいは取引のある金融機関のダイレクトメールなどでNISAの宣伝広告を見なかった方はいないのではないでしょうか。 それだけ各金融機関はかなり激しく営業や宣伝をしていました。 当初は、口座をつくると4年間は金融機関を変更できないということでしたので、各金融機関は顧客囲い込みに夢中でした。 キャッシュバックや紹介料や住民票取得代行など、過剰ともいえるサービス合戦で顧客獲得競争を繰り広げました。 顧客獲得合戦の熱も冷めてきた今考えてみると、肝心の国民にはNISAは本当に得なのでしょうか? NISAは、利益が出れば非課税の恩恵を得ることができます。 でもNISAの本質は非課税ではなく、元本を書き換える「値洗い」という仕組みです。 だから損が出た場合もマイナスに元本が書き換えられることになります。 NISA口座で元本100万円を運用し、5年後に課税口座に切り替わる際に80万円に下がっていれば、元本も100万円から80万円に書き換えらます。その後80万円を課税口座で運用し1年後に100万円に戻ったときに売却したとすると、元本が80万円に書き換えられていますから、20万円の譲渡益が出て課税されてしまいます。 100万円の元本が100万円に戻っただけなのに税金がかかってしまいます。(涙) このように非課税どころか余計に税金がかかる可能性があるのです。 つまりNISAというのは利益が出なければ、何の役にも立たない制度ということがわかります。 そもそも、国民に正しい運用知識が伝わっていて、安定して利益を得ることができれば、課税されていたとしても、もっと多くの人が運用していたのではないかと思います。 でもNISAが導入された今も国民に正しい運用知識が伝わらないまま制度だけが一人歩きしています。 今も金融機関は、商品の販売が一番の目的で、安定運用のための知識を教えたりサポートしたりすることはほとんどありません。 この調子では、5年後損をかかえる人も結構いるのではないかと思ってしまいます。 NISAは、国民の資産形成の一助のための制度です。 この制度が定着するには、5年後に、利用してよかったね、と多くの人が感じて国民の評判がよくなること。 そのためには、我々独立FPが正しい運用知識を伝え広めていくことがとっても大事ではないかと思います。 肝に銘じてこれからもがんばります。
田島FP事務所 CFP 田島稔之